新・rona9229の日本サッカー応援の軌跡

移行しました。単なる素人です。がんばります。 

ブロック崩し(ビセンテ・ミル氏の助言)

ベースボール・マガジン社の『ヨーロッパ・サッカー育成最前線』を読んでいる。いろいろな記事があるが、面白い記事もある。今回はそのうち、P2527のバレンシアの使っている戦術をビセンテ・ミルというバレンシアのユースのコーチが語ったのを引用します。(インタビュワーは小澤一郎氏)長文の引用になりますので、その分、同分量程度の個人の文も付けます。長くなりますがお許しください。

取り扱われている内容は、前線からのプレスと、ショートカウンターです。

———スペインにおけるカウンターと言うと、「引いて守ってロングボール」よりも、「高い位置でボールを奪って手数をかけずに攻め込む」という形をイメージします。

(ミル)少なくとも私が理想とするカウンターとは、高い位置からプレスをかけて中盤のセンターの高い位置、具体的にはセンターサークル付近でボールを奪い、そこから2、3本のパスでシュートまでいくことだ。

———あなたの理想とするカウンターを実践するうえで大切なことは?

(ミル)ボールを奪うまでと、奪ってからで求めることが変わる。バレンシア・ユースAでは、相手のサイドバックからセンターハーフボランチ?)にボールが出たタイミングを狙ってボールを奪いに行くコンセプトを持っている。

 まずは1トップのフォワードがセンターバックにプレッシャーをかけ、サイドバックにパスを出すように仕向ける。サイドバックに対しては、サイドハーフが縦のコースを切りながらプレスをかけ、フォワードもセンターバックへのパスコースを消す。すると、サイドバックセンターハーフにボールをつなぐことになる。そのパスが出る瞬間にセンターハーフの1人がポジションを上げてトップ下の選手と2人がかりでボールを奪いに行く。ボールを奪ってから重要なのは、スピードアップと少ないボールタッチだ。

・ここで書かれているのは、先日書いておいた、スペイン型の攻撃的なプレスの具体的な内容だと思います。CB→SB→DHと追い込んでいって、最終的にDH(ボランチ)のところでカットすることを狙う。

別に中央のDHに至るところまで待たなくても、その前の手順のところでカットできればカットしてしまえばいい。ドルトムントのゲーゲンプレッシング、コンテのユーベの基本コンセプトも、このような、論理的なプレッシングの構築にあったのではないかと思います。ミル氏は後半の章で述べられているように、ボールポゼッションをしっかりしていれば疲れない、相手が疲れる、したがってプレスがさらに有効になるというようなニュアンスで話をされています。

———これ以降、あなたの理想とするカウンターを「速攻」と呼ばせてもらいますが、速攻をうまく機能させるためにチームとしてどういう取り組みをしていますか?

(ミル)正直に言うとわれわれは、「ディビジョン・デ・オノール(所属リーグの名称)」において上位を狙えるチームで、選手の平均的レベルも高い。多くの試合で相手が引いて我々が攻め込むという展開となるため、引いた相手をどう崩すかという観点からの練習が多い。

 ただし、ボール・ポゼッションすることを前提として、ボールを失ったときにどうリアクションするかは常に練習メニューの中に取り入れるようにしている。

・これを読んで、どこでも強いチームは、引いたブロックに手を焼いているんだなぁ、そう笑ってしまいました。ミル氏は、これに対し、プレッシングこそが、ブロックを壊す最大の攻撃なのだ、そう言いたいのだと思います。ブロックの外でボールを回していても怖がられない。ならばいったんその中に入り込んで、ボールを持たせて、相手が攻撃に移る瞬間に奪ってしまう。一つの考え方として、ブロックは外からは壊せない、だからボールを中に入れて、それからプレスで中を引っ掻き回してやる。「守備からの速い攻撃」「組織された攻撃的プレス」というものが、ブロックを壊すのに最も適したものであると、ミル氏は言っているのだと思います。そうすれば、相手は苦し紛れにブロックの外にボールを吐き出すか、蹴りだすしかない。そうすると初めから、またボールポゼッション、ブロックの中に入っていく、という動きを繰り返すことになる。そうすると技術の差が点数の差になる、ということになります。

ただ、ロングボールのカウンターも何回もやられると、危険な武器になります。それへの対処法をミル氏は続けて述べられています。

———練習でもミニゲームの方向を変え、高い位置からプレスをかけるゲームとリトリートして組織を作るゲームを分けて行っていました。具体的に、あなたのチームでディフェンスラインがリトリートするのはどういうときでしょう。

(ミル)中盤のプレスをかいくぐられたとき。その場合は、ボールホルダーの動きや視線を見ながらディフェンスラインが自陣のペナルティエリア手前までリトリートするよう統一してある。

・プレスがだめなら、リトリートする。これが強いチームの条件なのだと思います。プレスをかわされると、DFラインとアンカーが下がっておく。他の選手は「ボールホルダーの動きや視線をみながら」守備に戻ったり、DF組織を作っていく。前線に残って、意地でもプレスをかけ続けるということはしない。特にDH周辺でのプレスは奪われると危険だから、リトリートしてスペースを消してやる、裏のスペースを消す、コンパクトに、守りに行く、ということです。このことについては、次に詳しい解説があります。

———中盤のプレスをかいくぐられ、ディフェンスラインがリトリートしてしまうとバイタルエリアが空いてしまいますが、危険ではないですか?オフサイドトラップを使いながらでもディフェンスラインを高く保ち、ボールにプレッシャーをかける策もあると思うのですが?

(ミル)私は、オフサイドトラップは使わないように指示している。これは好みの問題でもあるが、私はディフェンスラインを下げてその間に中盤より前の選手が戻る対処法を採用している。

・中盤の素早い戻りが必要だと思います。また相手の速攻を途中で止めれるのなら止めたらいいし、そういう中盤の壁になれる選手を育てることも必要かもしれない。

———基本的には、90分間高い位置からプレッシャーをかけ続ける守備を貫くということですね。

サッカーにおいては、マイボールであれば守備をしなくてよい。われわれは基本的にボール支配率で相手を上回るため、守備の時間が相対的に少なく、相手陣内でのプレー時間が長い。だから、ボールを失った際、素早い切り替えを行い、高い位置からプレッシャーをかけてボールを取り返すような守備を続けることは可能だ。

 問題は別のところにあって、われわれのリーグにはつなぐサッカーをしてくるチームが少ない点にある。われわれと対戦する場合、大半のチームがミスやリスクを恐れて後方からロングボールを蹴り込んでくるのでセンターサークル付近でボールを奪うことは難しい。その場合は、フォワードがキッカーにプレスをかけ、ディフェンスラインとセンターハーフがロングボールに対応して下がるような守備を組織する。多少間延びしてしまうが致し方ない。

・だいたいの文章を引いてこれは蛇足かな、とも思ったのですが引いておきます。ミル氏は大胆に前線はプレス、DFラインは後退してリトリートブロック、中盤は間延びさせるといっています。

これがラインを上げ続けると、運動量の多い、アヤックススタイルになるのかもしれませんが、ドルトムントのゲーゲンプレス(と呼ばれるもの)などは、前線での奪ってからの出足や、プレスのスピードを上げたプレスの強度の強いものですが、基本腰は後方に落ち着けているように感じます。(ドイツのチームはラインが高いので相手が前に出てきてくれるのかもしれません)ユーベは3バックとその前のボランチが堅いので、それが壁となってブロックとなり、対応していますが、いまいち見れてません。これは今後よく調べてみたいと思っています。

書いたものの、まとめをします。

・ブロックを崩すには、その中に入って、攻撃的プレスでかき回してから、速い攻めで決めに行く。

・相手のカウンターには、リトリートしたブロックを用意し、その密度で防ぐ。

この二つは、プレス戦術と、ブロック戦術で、ぶつかり合うものですが、そのぶつかり合いが、サッカーのせめぎあいになっているのかもしれません。また技術や、論理的なプレスの組み方が、勝敗の分かれ目になるのでしょう。

なお、ミル氏は2009年8月のアルクディア国際ユーストーナメントでバレンシアのユースチームを率いU20日本代表を破っていることは付記しておきます。優秀なコーチなのでしょうね。U20日本代表についてはこう語っています。「・・・あれだけ規律を保って高い位置からプレッシャーをかけられる代表チームは世界にそうはないと思う。ただ高い位置で奪えなかったときに代案がないことは課題だろう。バレンシア・ユースAでやっているように、高い位置でボールを奪えない時のために最終ラインをリトリートさせる戦い方も身に着けたほうがいい」ミル氏の助言、京都サンガも、考えてもらえればと思います。

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